フリーランス新法がスタート!
2024年10月17日 掲載
企業に属さず、複数の企業と業務委託契約を結んで仕事をするフリーランスを対象に、事業者との取引の適正化、安心して働ける就業環境の整備を目的とする、フリーランス新法(正式名称:フリーランス・事業者間取引適正化等法)が、2024年11月1日より施行されます。
フリーランスがフリーランスへ仕事を発注するケースでは、(発注した)フリーランス自身も法規制の対象になります。
フリーランスで仕事をする上で、必須の法知識になりますので、内容を確認して、業務体制づくりを行っていただけますと幸いです。
フリーランス新法の内容
法律が適用される事業者間取引は、<発注事業者から『フリーランス』への業務委託>となります。発注事業者へ義務化される7項目は、発注事業者の要件によって異なっていますので、ご注意ください。
以下の解説は、政府発行のパンフレット「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」のポイントをまとめたものになります。詳しくは、パンフレットの各該当ページをご覧いただけますようお願いいたします。
【注記】
一般的に使用するフリーランスと、新法の対象となるフリーランスが異なるため、法定義上の説明には、『フリーランス』と記しています。
対象となる取引
法規制の対象は、発注事業者から『フリーランス』への業務委託で、業種・業界の限定はありません。
発注事業者からフリーランスへ委託する全ての業務が対象となります。
※業務委託であっても、働き方の実態が社員と同じ扱いの場合は、(フリーランス法ではなく)労働基準法が適用されます。
※政府発行のリーフレットより引用。
対象となる事業者の定義
対象者の定義は、それぞれ次のようになります。
※法律用語では、『フリーランス』は「特定受託事業者」、発注事業者は「特定業務委託事業者」となります。
発注事業者に資本金の要件がないため、下請法(下請代金支払遅延等防止法)で規制対象外となる資本金1,000万円以下の中小企業や個人企業、フリーランスも対象となります。
フリーランスには、会社員の副業や、従業員を雇わずに1人で会社を経営するひとり社長も含まれます。
発注事業者 | フリーランス |
■フリーランスへ業務委託する事業者/従業員なし ※フリーランスへ業務委託するフリーランスも含む。 ■フリーランスへ業務委託する事業者/従業員あり |
■個人の事業者/従業員なし ※会社員の副業を含む。 ■一人法人の代表者/従業員なし |
発注事業者へ 義務化される7項目
義務化される項目は、発注事業者の要件(従業員なし/あり)と業務委託期間(1カ月/6カ月以上)によって異なります。
『フリーランス』が発注事業者になった場合は、従業員なしのため、義務づけられるのは、7項目のうち「①取引条件の明示」になります。
※政府発行のリーフレットより引用。
義務項目 | 具体的な内容 |
① 取引条件の明示 | 発注書(書面)や電子メール等により、次の取引条件を明示すること |
② 支払期日の設定 | 委託内容が完了した日から、60日以内のできる限り早い日に報酬支払日を設定し、期日内に支払うこと <支払期日の記載例> 〇良い例: ●月●日支払い 毎月●日締切、翌月●日支払 ✖悪い例: ●月●日まで ●日以内 ⇒ 支払日がいつか不明 ▼ 再委託の場合/支払期日の例外 発注事業者(元委託者)から請けた業務の全部または一部を、『フリーランス』へ再委託する時に、支払日を元委託者の支払日から30日以内に設定する場合は、取引条件の明示へ以下の3事項の追加が必要になります。 1.再委託であること 2.元委託者の名称 3.元委託業務の対価の支払日 また、元委託者から前払金を受けた時は、(再委託先の)『フリーランス』が業務の着手に必要な費用(資材の調達など)を前払金として支払うよう、適切な配慮をする必要があります。 |
③ 禁止行為 | 1カ月以上の業務委託を行った場合、次の7つの行為を行ってはならない フリーランスに責任がないことが前提になります。 1.受領拒否 2.報酬の減額 3.返品 4.買い叩き 5.購入・利用強制 6.不当な経済上の利益の提供要請 7.不当な給付内容の変更・やり直し ※各禁止項目の事例については、政府発行の「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」の 14~17ページをご覧ください。 |
④ 募集情報の的確表示 | 募集広告への情報掲載について ・虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならない ・内容を正確かつ最新のものに保たなければならない |
⑤ 育児・介護等と 業務の両立に対する配慮 |
6カ月以上の業務委託について 『フリーランス』が育児や介護などと業務を両⽴できるよう、申出に応じて必要な配慮をしなければならない 申出に対して必要な配慮をとれない場合は、その理由について説明することが必要となります。 <例> ・「⼦の急病により予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間繰り下げたい」との申出に対し、納期を変更すること ・「介護のために特定の曜⽇についてはオンラインで就業したい」との申出に対し、⼀部業務をオンラインに切り替えられるよう調整すること など |
⓺ ハラスメント対策に係る 体制整備 |
『フリーランス』に対するハラスメント⾏為に関し、次の措置を講じること ・ハラスメントを⾏ってはならない旨の⽅針の明確化、⽅針の周知・啓発 ・相談や苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 ・ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 等 |
⑦ 契約の中途解除の 事前予告・理由開示 |
6か⽉以上の業務委託の中途解除、更新しない場合について: ・原則として、30⽇前までに予告しなければならない ・予告の⽇から解除⽇までに、『フリーランス』から理由の開⽰請求があった場合、理由を開⽰しなけれはならない |
フリーランス自身も、規制対象になる!?
『フリーランス』自身が発注事業者になる場合や、受託した仕事の一部を、仕事仲間の『フリーランス』へ再委託する場合には、フリーランスも法規制の対象になります。
ただし、義務化される7項目の内、適用されるのは、「① 取引条件の明示」のみになります。
『フリーランス』の方へ、外注するケースがある場合は、明示事項を記載した「発注書」のフォーマットや電子メールのひな形を作成しておくことをおススメします。
※「発注書」と電子メールの記載例は、政府発行の「ここからはじめる フリーランス・事業者間取引適正化等法」の 8ページに掲載されています。
再委託の場合
『フリーランス』へ外注する業務が、再委託の場合、支払期日を、元委託者の支払日から30日以内(支払期日の例外)とすることができます。
その際は、「取引条件」へ、元委託者の名称や支払日など明示項目の追加が必要になります。
違反行為への罰則
発注事業者に違反と思われる行為があった場合、行政機関は、『フリーランス』からの申出に応じて、報告徴収・立入検査といった調査を行い、発注事業者に対して指導・助言、勧告を行います。勧告に従わない場合には命令・公表を行います。
検査拒否や命令違反には50万円以下の罰金が科せられます。
困った時は、「トラブル110番」へ
発注事業者との間でトラブルを抱えた時に、専門家へ相談できる窓口として、「フリーランス・トラブル110番」が用意されています。
厚生労働省の委託事業のため、費用はかかりません。無料で弁護士へ相談できます。電話やメールだけでなく、対面やWeb(ビデオ通話)での相談も実施しています。
相談内容で最も多いのが「報酬の支払い(30.8%)」です。少なからず誰もが経験することですが、トラブルを未然に防ぐ体制を作っていくためにも、取引先とどう交渉するか、どう解決するか、専門家のアドバイスは貴重になるかと思います。 相談事例集や過去の相談内容・相談件数などが掲載されていますので、参考になさってください。
【関連情報】
トラブル110番の相談及び和解あっせん件数/厚生労働省
フリーランス新法に関する問合せ先
フリーランス新法に関する、電話での質問や相談は、以下の行政機関で受け付けています。
問い合わせの内容が、どの領域(発注事業者へ義務化される7項目)かによって、所管する行政が異なります。
行政機関への申出は、オンラインで行えます。詳細は、各行政のHP'にて、公表予定となっています。。
義務項目 | 行政機関の連絡先 |
取引の適正化に関するもの ① 取引条件の明示 ② 支払期日の設定 ③ 禁止行為 |
● 公正取引委員会 ・関東1都6県、新潟県、山梨県、長野県 ⇒ フリーランス取引適正化室 ・以上以外は、各地方事務所へ ● 中小企業庁 ・相談窓口/取引適正化推進室 |
就業環境の整備に関するもの ④ 募集情報の的確表示 ⑤ 育児・介護等と業務の両立に対する配慮 ⓺ ハラスメント対策に係る体制整備 ⑦ 契約の中途解除の事前予告・理由開示 |
● 厚生労働省 ・各都道府県労働局へ |
【関連情報】
フリーランス法の説明パンフレット/内閣官房
フリーランス法に関するサイト/中小企業庁
フリーランス法 Q&A/中小企業庁
フリーランスの取引適正化に向けた取組/公正取引委員会
フリーランス法について/厚生労働省